美庵35号
『Bien-美庵』35号「CSアーティストたち」119ページより (評論家・結城 庵) 思いと愛を輝きに秘めた世界にひとつのメモリアル 日本は世界屈指のプラチナ・ジュエリー先進国としてデザインの豊富さ、完成度の高さで世界をリードする。 白い貴金属と高純度を愛する本物志向の日本の伝統。だが、その中にあっても萩原久夫の 『バースデイ・リング』は、注目すべき一品だ。 一見して、誰もが目を魅かれるリングの小宇宙、直径3ミリにうがたれた穴に浮かんだ文字。 それはひらがなによる”名前”である。日本人のほとんどが最初に名を書く美しい伝統字体・・・ 作家は、柔らかな曲線からなる「郷愁の文字」を極微の針金状プラチナと熟練の技巧によって、一線一曲”描き”あげると呼ぶにふさわしい繊細さで生命を吹き込む。 名は言霊ー生けるもの全てに与えられ、誕生の喜びとせいいっぱいの思いとともにあるもの。 作家はその思いの結晶に形を与え、手にする者に心の原点と安らぎ、そして精神の栄養を提供すると言えよう。 ルイ・カルティエの言う”貴金属の王”は、優れた技術と美術としての豊かな感性によって、それにまつわる全ての人の愛情を輝きに湛えるのだ。 |
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